【転職するなら】SIerとSESはどっちがいい?仕事内容や労働時間、年収などの違いから結論を出します

SES­企業で1〜3年勤めたITエンジニアの方の中には、「そろそろ転職を」とお考えの方も多いはずです。転職の仕方としては、SIer企業に転職するか、より条件の良いSESに転職するかの2通りが挙げられます。

そこで今回は、転職するならSIerとSESのどっちがいいかを解説します。仕事内容や労働時間、年収、キャリアパスなど、SIerとSESの優劣を多角的に検討するのでぜひ参考にしてください。

またSIerとSESの違いについても、わかりやすく詳しくお伝えするため、業界知識を深めるためのコンテンツとしてもご活用いただければ幸いです。

Contents

SIer、SESとはそもそもどんなもの?

まずはSIerとSESの定義や、両者の違いなどについてみていきましょう。それぞれについて理解を深めるとともに、自分にとってどちらか向いているかを考えてみてください。

SIerとは「自社でシステム開発などを請け負うIT企業」

SIerとは、システム開発やインフラ構築といった案件を請け負い、成果物を納品するIT企業のことです。SIerの社員は、自社内でさまざまなプロジェクトに参加し、馴染みのチームメンバーとともに日々仕事をします。

SIerにはメーカー系・ユーザー系・独立系などの分類がある

SIerは企業の成り立ちや事業形態などによって、以下の5つに分類できます。

  • メーカー系SIer – IT関連機器メーカーの子会社として主に親会社やグループ企業からの案件を請け負う。日立製作所や富士通など。
  • ユーザー系SIer – 一般企業の情報システム部門がIT企業化したもので、業種を問わず、さまざまな企業から幅広い案件を請け負う。NTTデータや野村総合研究所など。
  • 独立系SIer – 単独の企業であり、親会社の製品や意向に縛られない自由なサービス提供を強みとする。大塚商会や日本ユニシスなど。
  • 外資系SIer – 外国資本の企業で、主に海外企業からグローバルな案件を請け負う。日本オラクルやアクセンチュアなど。
  • コンサル系SIer – IT知識に乏しいクライアントへの提案に特化した企業で、DXの流行などもあって注目されている。NTTデータや野村総合研究所をはじめ、多数のSIerがコンサルにも力を入れている。

上記のどれに転職するかで、同じSIerであっても仕事内容や待遇が変わってくる可能性があります。例えば、メーカー系やユーザー系は親会社のパワーにより、仕事の規模や給与水準が高い一方、独立系は中小規模であるものの仕事のやりがいが大きいといった具合です。SIerに転職する際は、ぜひ分類とそれに伴う特徴にも注目してみてください。

SESとは「取引先にエンジニアの労働力を提供する企業」

SES(客先常駐)とは、クライアント企業にITエンジニアの労働力を提供する契約形態および企業のことです。SESの社員は、システムの運用・保守を頼みたい一般企業や、人材を補強したいIT企業(SIer)の現場に行き、仕事をします。

派遣とSESは指揮命令権の所在が違う

現場に指揮命令権がある派遣とは違い、SESの場合は社員を送り出した企業に指揮命令権があります。そのため、SESの社員に対して、クライアント企業が細かい指示を出したり、労働時間を管理したりすることはできません

もし現場がSES社員に対して指揮命令権を行使した場合、「偽装請負」として問題になり、罰則や行政処分を受ける可能性があります。

SIerとSESの違いは「仕事内容と年収」

働くエンジニア個人の目線から見ると、SIerとSESの大きな違いは「仕事内容」と「年収」です。以下を参考に、どちらの働き方がより自分に合っているかを検討してみてください。

SIerは上流工程にも関われるが長時間労働になりがち

SIerに転職すると、システムやインフラの要件定義、機能定義、設計といった上流工程にも関われる可能性があります。とくに元請け(直請け)のSIerだと、プロジェクトの始まりから携われるので、クリエイティブなやりがいや面白さもあるでしょう。

しかし、SIerでは成果物を納期までに完成させる請負契約を結ぶため、長時間労働になりやすい体質があります。プロジェクトの難易度が高かったり、同時に受注した案件が多かったりすると、終電帰りや土日出勤になることもしばしばです。

SESの仕事は定時で帰れるルーティンワークが基本

SESの社員は客先の現場に赴き、システムを動かしたり、データベースを作ったりと、いかにも「エンジニア(技術者)らしい」仕事に従事します。半年〜2年のサイクルで現場が変わるまで、大まかな仕事内容は基本同じで、専門のルーティンワークに携わることになります。

SESの働き方の特徴は、SIerに比べて労働時間が短いことです。SESは時間単位の契約になっており、納期や成果物の完成といったこととは法的に無関係なので、多くの場合、定時で帰れます。またシステムやインフラの運用・保守を中心とした業務の性質上、そもそも残業が発生すること自体がまれです。

SIerは平均年収が高く、ハイクラス転職も目指せる

転職サイトdodaの調べによると、SIer(システムインテグレータ)の平均年収は452万円で、SESよりも給料の水準がずっと高いです。30代で500万円超え、40代で600万円超えを目指すことも現実的であり、高年収を希望する方に向いています。

またSIerに転職すればプロジェクトマネージャーやITコンサルタントなどのキャリアパスも開けます。両職種とも平均年収は650万円ほどなので、将来的なハイクラス転職を目指す方にもSIerは適切です。

SESの給与水準は低めだが「高還元SES」も存在

SESの平均年収は、5年勤続して400万円に届くかどうかというレベルです。相当稼いでいる人で500万円くらいなので、IT業界の中で見るとSESの給与水準は低いといえます。

とはいえ、一般企業と比較すれば、SESもどちらかというと稼ぎやすい職種です。また定時で帰れることが多く、ワークライフバランスを実現しやすいので、「割の良い仕事」ともいえるでしょう。

また昨今は給与水準の高い「高還元SES」という区分も出てきています。高還元SESとは、クライアント企業から受け取る単価のうち、できるだけ多くを社員に還元するSES企業のことです。普通のSESだと単価の50%ほどが社員の取り分になるところ、高還元SESでは70〜80%くらいが社員に還元されます。

肝心なことは、「高収入を狙うならSIerに転職するしかない」ではなく、「SESでも年収は上げられる」ということです。そのため、年収を重視するのももちろん良いですが、希望の仕事内容や労働時間などを含めて総合的に転職先を考えるのが良いでしょう。

商流にも差はあるが重なる部分も多い

「顧客→元請け→下請け」という商流については、SIerとSESではっきりした区分はありません。「SIerは元請け、SESは下請け」という区分は厳密には正しくないといえます。

一般的にSIerは、顧客に依頼された案件をすべて自社で担当するわけではなく、いくつかのSIerが分担して成果物を作ります。つまりSIerの世界にも、元請け・2次請け・3次請けという商流があるということです。よって、「SIer=元請け」ではなく、実際には下請けも多いことになります。

一方、SESの社員は、2次請けや3次請け(ないしはそれ以降の)SIerに出向することが多いので、基本は下請けです。しかし、元請けのSIerが人材を補強するためにSESを使う可能性もあることから、SESの世界にも元請けは存在し得ます。さらに、話が前後しますが、2次・3次請けのSIerにSES社員が行く場合、SIerもSESも商流の中での階層は同じです。

そのため、「SIerだから〜」「SESだから〜」という議論は、少なくとも商流の観点ではあまり意味がありません。転職を志すエンジニア個人にとってより重要なのは、「各企業がどんな仕事をしているか」という論点です。

SIer・SESともに将来性は十分にある

IT業界の堅調な市場規模の拡大を見るに、SIer・SESともに将来性は十分だといえます。DXや5G、テレワーク関連のニーズもあることから、少なくとも2030年ごろまでは需要過多の状態が続くでしょう。

とはいえ、将来性があるのはあくまで業界全体であって、それぞれのSIer企業やSES企業が、この先5年、10年生き延びられるかどうかはわかりません。

IT業界の人手不足はこの先ますます深刻になっていくといわれています。そのため、人材を集められないIT企業は、SIer・SESを問わず、倒産したり統合されたりといったケースが今後増えていくでしょう。

またSIer・SESともに3次請け・4次請け・5次請けと下請けが連なる多重下請けの構造が問題になっています。商流の階層が下がれば下がるほど、単価が下がり、仕事内容も単純なものになっていくので、下請け企業の経営は困難です。よって、業界に通底する構造的な問題が解消されない限り、下請け企業にとっても厳しい状況が続いていくでしょう。

「優良企業を見極めること」が絶対的に重要

転職を考えるITエンジニア個人としては、優良企業を見極めることが何よりも重要です。

多重請負の構造がある中で人手不足が進行することにより、今後は将来性のあるIT企業と危ういIT企業の差が、より顕著になってくるとも考えられます。転職希望者にとってはまさに「天国と地獄」であり、優良企業に転職すればより良いキャリアがある一方、ブラック企業に入ってしまうと大失敗してしまう恐れがあります。

そのため、適宜転職エージェントなども活用しつつ、良い企業、安全な企業を正しく選り分けて転職することが大切です。

また優良企業に採用されるためには、自らの人材としての価値を高めることも欠かせません。そのため、十分なスキルが身につくまでは、現職で経験を積むなど、適切な転職のタイミングを見極めるということも肝心だといえます。

SIerとSES、転職するならどっちがいい?

以下では、SIerとSESのどちらに転職すべきかについて解説します。

結論から述べると、一概に「どっちがいい」とはいえません。SESとしての勤続年数や希望する仕事内容、キャリアプランなどによって、選択の合理性が変わってきます

そのため、以下を参考に、現時点の自分にとっては、SIerとSESのどっちがいいかを考えてみるのがおすすめです。

まずは「SES→SES」の転職で好条件を得るのがおすすめ

まだITエンジニアとしての経験が浅い方が転職を希望する場合は、ひとまずSESからSESに転職し、好条件を勝ち取るのがおすすめです。具体的には未経験転職から1〜3年目くらいであれば、まだSESで働き続けるのが良いでしょう。

SESから­SESの転職を推奨する理由は、SIerから好条件のオファーを得るには、まだスキルや実務経験が不十分だといえるからです。SIerとSESでは、SIerのほうが全体的に企業規模が大きく、転職のハードルもSIerのほうが高い傾向にあります。よって、人材としての価値をかなり上げないと、上のほうのSIerから内定を得るのは困難です。ましてSESからの転職者は、SIerの働き方に関しては未経験者なので、よほどの腕前がない限り、企業にとって魅力的には映らないでしょう。

先述の通り、SIerにも階層があり、経営が苦しい会社もあります。そのため、時期尚早なのにもかかわらずSIerへの転職に踏み切り、下のほうのSIerに入ることに、メリットはあまりないといえます。

一方、SESからSESへの転職なら、条件面でレベルアップできる可能性が十分にあります。SESなら経験があり、ある程度のスキルに加えて、仕事の勝手もわかっていることから、優良企業にとっても魅力的に映るでしょう。

管理部門やコンサル方面を目指すなら将来はSIerに

SIerに転職する魅力は、管理部門やコンサルティングの方面でもキャリアパスが開けることです。そうした方向へキャリアアップすれば、高年収が実現できることに加え、仕事の内容も一技術者を超えたものになってきます。

例えば、管理部門だとマネージャーの経験を積みつつ、部長や事業部長などに出世していくこともできれば、プロジェクトマネージャーとして再転職や独立も可能です。またコンサルの方面でも、ITコンサルタントとしての独立やコンサルティングファームへの再転職といったハイキャリアを目指せます。

そのため、将来的にエンジニア個人の枠を超えた仕事がしたいなら、いずれはSIerに転職するのが良いでしょう。その上で、マネジメントやコンサルも含めた上流工程に積極的に関わっていくのがおすすめです。

エンジニアとしてスキルを極めたいならずっとSESで

SESで働くことの大きな魅力の一つとして、エンジニアらしい仕事ができることが挙げられます。ITエンジニアを志したときは、誰しもパソコンでコードを書いたり、インフラを構築したりといった技術的な作業を想像したことでしょう。SESにいれば、ずっとそうした現場での技術的な働きができます。

もともと技術者や職人の志向・気質が強い方は、SIerに転職して上流工程に携わってみると、「やりたい仕事と違う」という気持ちが生まれるかもしれません。上流工程の担当だと、いくら自分で完璧な設計をしても、実際に作るのは違う人なので、自らの技術的なこだわりは反映できないのです。実際、SIerに転職したものの、「やっぱりエンジニアとして現場で活躍したい」といってSESに戻ってくる人もいます。

そのため、技術者としてのスキルアップに大きな関心がある場合は、ずっとSESを続けるのもおすすめです。年収については、最終的に大手企業や高還元SESに転職して大幅に上げるという手があります。

SIer・SESに転職した人の声をそれぞれ紹介【口コミ・評判】

最後にSESからSIer、もしくはSESからSESに転職した人の声を紹介します。以下の口コミにある成功体験や失敗談を見ながら、ご自身の転職について考えてみてください。

「SESからSIer」への転職に関する口コミ

まずはSESからSIerに転職した人の成功体験と失敗談をそれぞれ紹介します。

SESでの十分な経験が上流工程や管理に活きた

この方は、SESからSIerへの転職経験を持つインフラエンジニアの方ですが、SES時代に下流工程を十分に経験したことが、SIerでの上流工程や管理の仕事に役立ったそうです。

設計にしろマネジメントにしろ、やはり現場のことをよくわかっているのが望ましいので、SIerでの順調なキャリアアップのためにもSESでの下積みは大変重要だといえます。

仕事のやりがいを求めて転職したものの不満足な結果に

SESの仕事内容に満足できず、SIerに転職する人も一定数いますが、上記のように不満足な結果に終わるケースもあります。先ほども解説した通り、SIerの世界にも階層があり、上のほうの会社でやりがいのある仕事をするには、かなりのスキルと経験が必要です。そのため、自分の現在地を冷静に見つめながら、転職時期を見極めることが肝心といえるでしょう。

また仕事内容の観点において、SIerに転職する旨味は主に「上流工程」にあるので、この方のように開発がしたかったのであれば、SESに転職したほうがよかったのかもしれません。転職によってSES内での階層を上げれば、「エンジニアらしい」仕方で仕事のやりがいがアップしたはずです。

以上を踏まえると、SIerとSESの違いを含め、正しい業界知識を持ったうえでキャリアプランを考えることも非常に大切だといえます。

「SESからSES」への転職に関する口コミ

続いては、SESからSES、とくに高還元SESへの転職に関する当事者の口コミを取り上げます。

高還元SESへの転職で年収が100万円以上アップ

この方は目下、高還元SESに勤務中のインフラエンジニアですが、高還元SESに転職したことで、年収が280万円から400万円にアップしたそうです。

このように、最近はSESから(高還元)SESへの転職でも、大幅な年収アップが見込めるようになっています。

スキルアップを重視してSESにとどまることを決断

この方のようにスキルアップに貪欲な方は、まさしくSES向きだといえます。このままスキルを高めていけば、将来は大手のSES企業でやりがいの大きい専門的な技術職に従事できるでしょう。

また途中で上流工程に関心が出てきたら、現場での豊富な経験を活かし、SIerなどでキャリアアップするという未来も開けます。以上のように考えると、経験が浅いうちは安易に転職するよりも、SESにとどまって技術を磨くことに専念するのが最善なのかもしれません

経験が浅いうちはSIerよりもSESのほうがおすすめ!

SIerとSESはどっちがいいか。結論は現時点ではSESのほうがおすすめです。

ITエンジニアとしての経験が浅いうちはSESで経験値を高めてスキルを磨き、時期を見て再度SIerかSESかの判断をしましょう。将来的にマネジメントやコンサルの方面に進むならSIerに転職しても良いですし、エンジニアとして現場での完璧な仕事を追求するならSESにとどまるのも良い選択だといえます。

なお、昨今は「高還元SES」もあるので、SESにとどまったとしても高年収を得ることは可能です。そのため、収入というよりはむしろ、仕事内容や労働時間、キャリアパスといった点から総合的に、どちらに転職するかを考えてみてください。

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